平成10年

国民生活白書

「中年」 その不安と希望

平成10年12月

経済企画庁


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第I部 人口構成の変化と中年世代

第5章 中年世代と家族・家庭

第2節 子どもをめぐる不安と期待

1. 親子の不安と悩み

(子供についての悩み,不安は「基本的な生活習慣」と「勉強や進学」)

親は子供についてどのようなことで悩み,不安に感じているのだろうか。総務庁「子供と家族に関する国際比較調査」(1994,95年)によれば,子供の年齢に関係なく,あいさつ,規則正しい食生活など,基本的な生活習慣に関しての悩みを挙げる割合が比較的高く,子供の年齢が7〜9歳で28.8%,10〜12歳で30.7%,13〜15歳で22.8%となっている(第I-5-14図)。また,勉強や進学,受験についての悩みは子供の年齢が上がるにつれて高くなり,「進学や受験」を挙げている割合は,子供の年齢が10〜12歳で24.9%,13〜15歳で37.6%となっている。

(子供にとって悩みの相談相手は「友人」)

また,子供たちは深刻な悩みにぶつかったとき,誰に相談するのだろうか。総理府「青少年の非行等問題行動に関する世論調査」(1998年)によれば,青少年の多くは悩んだときに一番相談したい人として,男女とも「友人」を挙げており,親を挙げる人よりはるかに多い(第I-5-15図)。「母親」に比べて「父親」は少なく,女子の場合は極めて少ない。

2. いじめ,不登校,非行等をめぐる最近の状況

(親があまり認識していないいじめの現状)

いじめに関する事件数は,87年の97件以降横ばい傾向が続いた後,95年160件,96年162件と増加し,97年には93件となった。また,総務庁「いじめ・登校拒否・校内暴力に関するアンケート調査」(98年)により,いじめられた経験,いじめた経験についてみてみると,小学生で36.4%,中学生で31.4%がいじめられた経験を持ち,小学生で27.9%,中学生で31.8%がいじめた経験を持っている(第I-5-16図)。

他方,親の認識をみると,子供がいじめにあったことがあると認識しているとみられる親は,小学生の親で15.6%,中学生の親で14.6%である。また,子供がいじめを行ったことがあると認識しているとみられる親は,小学生の親で4.0%,中学生の親で4.8%となっており,いじめに対する親の認識は高くなく,特にいじめた側で認識していないことが目立っている。

総理府「青少年の非行等問題行動に関する世論調査」(98年)から,青少年のいじめ問題についてどうしたらよいと思うかを尋ねた間に対する回答をみると,「いじめを受けた者が,学校の先生や親に相談しやすい雰囲気をつくる」(20歳年に持たせるよう,親が教育やしつけを充実する」(20歳未満41.5%,20歳以上62.7%),「学校の先生や親が,いじめを見逃さないよう,よく目配りをする」(20歳未満41.1%,20歳以上44.6%)のようになっている。

(増え続ける不登校者数)

また,子供の不登校は増加傾向にある。97年度の不登校者数(「学校ぎらい」を理由に年間50日以上学校を休んだ児童・生徒の数)をみると,小学生では480人に1人,中学生では63人に1人の割合となっている(第I-5-17図)。

一方,学校には登校しているものの,授業には出ずに保健室で過ごす「保健室登校」という現象も目立ってきている。全国の小・中・高等学校各約120校を対象とした,日本学校保健会「保健室利用状況に関する調査」(1996年)によると,保健室登校をしている子供がいる学校の割合は,96年には小学校で12.1%,中学校で37.1%,高校で19.4%となっている。

総務庁「いじめ・登校拒否・校内暴力に関するアンケート調査」により,学校を休んだ生徒がどのようにしてもらえたら学校を休まなかったかという間に対する回答をみると,「気軽に相談できる先生がいたらよかった」「先生にゆっくり相談できる時間があったらよかった」と答える割合が高くなっている(第I-5-18図)。

いじめや不登校などの問題が生じた場合に,学校を変更することも問題を解決するための一つの手段でありうると考えられる。このためにも,小中学校の通学区域や学校指定については,保護者等の意向に十分配慮し,弾力的に取り扱うように努めていく必要があると思われる。

(近年再び増加している少年犯罪)

少年犯罪の発生率は,1980年代前半をピークにその後減少傾向にあったが,近年再び増加している(第I-5-19図)。97年の警察による刑法犯少年の補導人員は15万2,825人で,前年比1万9.,244人(14.4%)増となっており,千人当たり16.1人で,前年に比べ2.4人増となった。また,触法少年(刑法)の補導人員も2万6,125人と前年比2,883人(12.4%)増で,千人当たり4.6人(前年比0.7人増)となっている。

一方,性格,行状から判断して,将来,罪を犯し又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある20歳未満の者(虞犯少年)の家庭裁判所における終局的処理人員をみると,80年代前半は3千人台で推移していたが,その後減少を続け,96年には863人となっている。態様別にみると,家出,交友不良,不純異性交友等が多くなっている。

法務総合研究所「犯罪白書」(1998年)により,少年犯罪について国際比較してみる。犯罪構成要件や統計の採り方,少年年齢の法律的差異等,様々な違いがあることを考慮する必要はあるが,96年の主要な犯罪の少年の検挙人員の人口比(10歳以上18歳未満の人口の対10万人比)をみると,日本は1,100人と,ドイツ5,549人,イギリス3,063人,フランス2,311人,アメリカ2,045人に比べ少なくなっている。

(「親子のふれあいが少ない」ことを非行の原因とする青少年)

当庁「選好度調査」(98年)によると,18歳未満の子供を持っている親のうち,「場合によっては自分の子供が非行に陥ることもあり得る」と思う割合は,父親で26.0%,母親で24.6%となっている一方,「絶対にない」とする割合は父親で7.6%,母親で8.1%である。

また,青少年の非行の原因のうち,家庭の問題点として挙げられているものについてみてみると,20歳以上の者では「親が子供を甘やかしすぎている」「親と子供の会話,ふれあいが少ない」が多くなっている(第I-5-20図)。一方,20歳未満の青少年は,「親と子供の会話,ふれあいが少ない」との回答が他の項目に比べて多い。

3. 子供に関する父母の意識,子供との接触

(子供を育てることは「楽しみ,喜び」と感じている人が多い)

以上のように子供に関する不安が多い中,親は子供を育てることについて,どのように感じているのだろうか。「選好度調査」(98年)により,子供を育てることについての親の意識(7歳以上の子供を持つ親の意識)をみると,父親,母親ともに子供を育てることを「楽しみ,喜び」「義務,責任」と感じている人の割合が高く(第I-5-21図),次いで「生きがい,やりがい」となっている。また,母親は,父親よりも子育てを「楽しみ,喜び」と感じている割合が多い一方,「苦労」だと感じている割合も多くなつている。

(8〜9割の親は子供と話をしている)

では,親と子供はどのくらい話をしているのだろうか。総務庁「子供と家族に関する国際比較調査」(94,95年)により,日本,アメリカ,韓国についてみると,どの国でも「よく話をする」人の割合は父親より母親の方が多く,7歳以上の子供を持つ母親についてみると「話をする」(「よく話をする」+「時々話をする」)割合は3か国とも9割を超えている。一方,父親のみをみると,アメリカや韓国では子供が低年齢であるほど「よく話をする」割合は高くなっているが,日本ではそのような傾向はみられない(第I-5-22図)。

(日本の父親が平日に家族と過ごす時間は少ない)

連合総合生活開発研究所「生活時間の実態に関する調査報告書」(1996,97年)の国際比較によると,父親(正確には男性勤め人)が家族とともに過ごす時間は,休日には他の国と大きな違いはみられないものの,出勤日には他の国に比べて少なくなっている(第I-5-23図)。

また,総務庁「子供と家族に関する国際比較調査」(94,95年)から,「子供のしつけ」と「子供の勉強をみる」の2つの項目について,家庭における父母の役割分担をみてみると,日本,アメリカ,韓国のいずれの国でも,父親の役割とする割合は高くないが,特に「子供のしつけ」については,日本は韓国と比べても母親の役割とする割合が高く,父親の役割とする割合が低くなっている(第I-5-24図)。

(学校週5日制,週休2日制により,親子とも土曜日の在宅時間が増加)

NHK「国民生活時間調査」により,平日と土曜日における父親(正確には男性勤め人),小学生,中学生の在宅時間(睡眠時間を除く)を1970,85,95年で比較してみると,平日では父親,小学生,中学生ともほとんど変化はみられないが,土曜日については,85年に比べて95年は,男勤め人と中学生で1時間ほど,小学生で30分ほど増加している(第I-5-25図)。これは父親の場合は職場の週休2日制の普及により,また,小中学生の場合は月2回の学熔週5日制の導入によるものと考えられる。

(学校週5日制により子供が家族と過ごす時間は増加)

学校週5日制は,1992年9月に月1回として導入され,95年4月からは月2回となった。今後,2002年度からは完全学校週5日制になることが予定されている。学校が週5日になったことで,子供たちの生活にも変化が生じていると考えられるが,小中学生に尋ねたアンケート調査(連合総合生活開発研究所「子どもの生活時間調査研究報告書」)によると,学校週5日制によって増えた時間として,「趣味や遊びの時間」,「寝る時間」とともに,「家族と過ごす時間」が多く挙げられている(第I-5-26図)。

(親が自分を理解していると思う子供ほど家庭生活も学校生活も楽しい)

総務庁「青少年の生活と意識に関する基本調査」(95年)によれば,親子の「会話の頻度」が多いほど,また,親子の「接触時間」が長いほど,子供は親が自分を理解していると思い,親は子供を理解していると思う傾向があるようである。また,親が自分のことをよく理解してくれていると思っている子供(高理解度群)のうち,家庭生活がとても楽しいと思っている者は7割を超え,学校生活がとても楽しいと思っている者は5割を超えている。これに対し,親が自分のことをあまり(全然)分かつていないと思っている子供(低理解度群)は,それぞれ2割程度,3割程度となっている(第I-5-27図)。


あまり家事をしていない日本の子供たち

子供が家事の手伝いをしている時間は,親子で言葉を交わしたり,親が子供に様々なことを教えたりするなど,親子が行動をともにする時間とも考えられる。そこで,日本の子供たちがどのくらい家事を手伝っているかをみてみることにする。

小学生が,どのような家事の手伝いをしているかを東京,上海,ソウル,ロンドン,ニューヨークで比較した調査をみると,東京の小学生は他の都市の小学生に比べてあまり手伝いをしていないといえる()。男子の方が女子に比べて手伝いが少ないのは各都市共通であるが,東京の男子小学生は特に少ない。

また,過去と比べてどう変わってきたかをNHK「国民生活時間調査」からみてみると,1970年には小学生32分,中学生56分,高校生59分であったが,85年には小学生26分,中学生28分,高校生35分,95年は小学生で21分,中学生で18分,高校生で21分と少なくなってきている(週平均1日あたり全員平均時間)。

なお,95年について男女別にみてみると(全員平均時間),男子と女子の家事時間数はそれぞれ小学生で15分,28分,中学生で10分,25分,高校生で11分,29分となっており,中学生,高校生では女子は男子の約2倍以上となっている。