平成9年
国民生活白書
働く女性 新しい社会システムを求めて
平成9年11月
経済企画庁
第I部 女性が働く社会
第3章 働く女性と家族
(家庭内の分業関係の変化)
女性の働く形態の変化を家族との関係でみてみると,戦前,多くの女性は農家や自営業世帯の妻であり,自ら家族従業者として働くことが多かった。自営する家族という1つの生産主体のなかで「夫も妻も共に働く」という協業関係が成り立っていた。
戦後,サラリーマン化が進み,夫の職と住が分離するようになるにつれ,家事労働に専念する専業主婦が増えた。こうして「夫は仕事,妻は家庭,という分業関係の家庭が多くなった。しかし,特に1970年代以降,サラリーマン世帯の主婦の中にも外で働く人が目立っようになっていき,夫婦間の分業関係にも変化が生じてきた。
(女性の就業が家族に与える影響)
女性(主婦)の就業意識が変化し,実際に働き始めたことが家族にどう影響するかについて,「選好度調査,(97年)の「既婚女性が働くことの家庭生活への長所,短所」という間によって,既婚女性の就業形態別にみてみた。まず長所については就業形態にかかわらず「家計にゆとりができる」が半数以上を占め,次に「妻の自立と社会性を促す」が多くなっている(第I-3-1図)。一方,短所については,全体を通して「家事手抜き,夫にしわよせ」が多いが,フルタイムで就業している女性では「妻に時間的余裕がない」,パートタイムで就業している女性では「仕事と家事の妻への過重負担」と答える者の割合が多く,実際に働いている女性本人にとっては仕事と家事の2つの労働が過重負担になっているという実態がうかがえる(第I-3-2図)。
(家事分担の少ない日本の男性)
働く女性が増えるにつれ,男女の役割分担に関する意識が変化してきた。これは総理府の「男女共同参画に関する世論調査」の「男は仕事,女は家庭」という考え方に対して,同感する方と答えた割合が1987年から95年にかけて,女性で36.6%から22.3%へ,男性で51.7%から32.9%へとそれぞれ減少してきたことからもうかがえる。
では,実際に男性の側はどう変わってきたのかを,生活時間の変化でみてみる。まず,平日の家事時間は70年,95年とも26分でこの25年間全く変化していない。男性は仕事のある平日は家事をほとんどしないことがうかがえる。一方,土曜,日曜については,週休2日制の普及などもあって,80年代後半以降の10年間に土曜で1時間54分,日曜で49分労働時間が短縮されたなか,家事時間は土曜が27分,日曜が23分それぞれ増加している(第I-3-3図)。このように男性の時短の一部は家事の増加となっている。
次に,夫が主に家事を分担している割合を妻の割合との対比で諸外国と比較してみると,日本は韓国と並んで夫が家事を分担する割合が低く,「子供の勉強の指導」を除けば約1〜2%程度にすぎない(第I-3-4図)。
また,役割分担に対する男女の意識の差を,より具体的に家事の分担について,選好度調査」(97年)の「共働き夫婦間の理想の仕事・家事分担,という問でみてみると,51.1%の女性が「家事の分担は常に半分ずつで共働き」を望んでいるのに対し,51.5%の男性が「家事を引き受けるつもりはない」と答えており,共働きの場合であっても役割分担についての男女間の意識には大きな隔たりがあることがわかる(第I-3-5図)。働くことに対する女性の意識が変化するなか,夫婦共働きでありながら,家事をしないとしている男性(夫)が約半数にものぼっていることから,働く女性(妻)にとっては家事と仕事で二重の負担が生じることになり,次節で述べるように女性にとっての結婚の利点が減少し,晩婚化,未婚率の上昇につながることにもなる。