平成9年
国民生活白書
働く女性 新しい社会システムを求めて
平成9年11月
経済企画庁
第I部 女性が働く社会
本章では,女性とその働く現場である企業との関わりについてみている。
(1)男女間賃金格差は縮小傾向にあるが,欧米諸国と比較して依然大きい。
女性の勤続年数も長期化しているが,男女間の差は小さくない。また,職場で男性が優遇されていると考えている人が半数以上である。女性管理職数は増加傾向にあるがまだ多くない。ただ,職場内での配置処遇などを男女とも同じにする企業は増加傾向にある。
(2)子供を産んでも就業継続を望むという女性が増加しているが,理想と現実との間にはギャップがある。このように,女性は就業を中断せざるを得ないことが多く,そのことが年功賃金体系を特徴とする日本的雇用慣行の下では,男女間賃金格差を大きくしているとみられる。
(3)女性の勤続年数が一般に短くならざるを得ない場合が多いこと自体が,企業の女性活用に対する姿勢を積極的でないものにしている。しかし,そのことによって職場での登用の機会が狭められれば,実際の職場での経験を通じて能力が形成されていくことが多いという日本的雇用慣行の下では,女性の能力形成機会が限られ,それが昇進や賃金にも影響するようになり,ひいては女性の働き続けたいという意欲を失わせやすくしている可能性がある。以上のように,賃金や勤続年数,職業能力形成機会それぞれの男女間格差は互いに因となり果となって関わりあっている様子がうかがわれる。
(4)企業は,様々な制度により出産・育児・介護などを支援する動きをみせている。しかし,特に介護休業制度はまだ実施企業の割合が高くないのが現状である。
(5)女性は概して日本的雇用慣行の外で働いており,専門職・資格職に多く進出しているが,そこでは,出産・育児による中断の損失はさほど大きくない。
(6)経済のサービス化に伴い,契約社員,派遣労働者,パートタイマー等が増加傾向にある。
(7)女性の活用と企業の成長の間に正の相関がみられる業種も確認される。
(8)女性労働力は日本経済の成長産業・成長職業分野を支えてきた。
出産・育児後の女性の活用が十分になされにくいのは,賃金体系による面が大きい。日本の多くの企業の賃金体系は,入社当初は低く,長期間継続して勤務することによって,企業内で特有の技術・技能を身につけ,賃金が上昇していくという,年功賃金体系となっているため,出産・育児等で就業を中断することは,働く女性にとって大きな不利をもたらしているのが現状であろう。逆に言えば,年功賃金体系下においては,一度退職すると復職時の条件が,勤続していた場合のそれと比べ悪くなることが女性の能力の発揮を阻んでいる一因といえるだろう。本章では,女性が働き続けるための問題点についてみる。