平成9年
国民生活白書
働く女性 新しい社会システムを求めて
平成9年11月
経済企画庁
女性の職場進出がめざましい。かつての農業社会では,女性は身近なところで生産のために働き,かつ家庭内の家事労働も引き受けていた。その後,工業化とともにサラリーマン化が進んだが,サラリーマン世帯の妻の多くは,家事労働に専念する専業主婦となった。しかし,経済のサービス化などの経済社会環境の変化の中で,サラリーマン世帯の妻も社会で収入を得て働き出すようになった。その割合は1988年には,半数を超えるものとなった。
こうした動きは,世界的にも起こっている。女性の職場進出の流れはもはや後戻りすることのない大きな流れであると言えよう。
その流れは社会経済を,また国民生活の姿を広範,多岐にわたって変えている。女性が働く企業の現場をみると,従業員の多くが男性であることを前提とした従来型の雇用慣行が変容を迫られている。
家庭生活の面では,まず,他の家族構成員との間の役割分担の問題が出てきている。すなわち,女性が専業主婦でなくなることにより,家庭内の仕事の分担などで新しい対応が必要とされるようになってきている。また,未婚率の上昇や少子化の進展といった問題も指摘されている。
教育の現場にも影響が及んでいる。女性の職場進出という社会の大きな動きは,女子高等教育に対するニーズを変え,高等教育機関にも新たな対応を迫っている。また,女性の高学歴化自体が,女性の職場進出を促進し,社会を変えていく大きな力となっている。
さらに,経済社会全体に関わる問題として,女性は,21世紀の本格的な高齢社会を支える貴重な労働力であるとの認識が高まってきている。
しかし,大きな変化が新たに起こるときには,社会システムの変化が追いつかないことも多い。女性が働くという新しい動きの中で,社会制度・慣行に多くの問題点が残されていることも確かである。
以上のような観点から,本年度の国民生活白書では,可能な限り国際比較を取り入れながら,女性の職場進出とその国民生活,社会制度・慣行との関わりについて分析することとした。
第I部では,第1章で女性の職場進出の状況を概観した上で,第2章以下で,女性が働くことの社会経済への影響等をより具体的にみていく。第2章では,女性が働く現場である企業との関わりについて,雇用形態,賃金等の処遇,勤続年数,職場環境の実態とそれらを巡る問題等をみる。第3章では,女性が働くことと家族との関係を,男女間の役割分担や晩婚化,少子化との関係を含めてみてみる。第4章は,女性が働くことと教育との関係についてみる。第5章では,出産・育児,介護に関する制度,年金などの社会保障制度,税制など,企業,家庭・個人などにまたがる様々な社会制度との関係について国際比較を踏まえて考察する。
第II部では,第1章で,1996年度の家計を取り巻く経済社会の動向を概観し,家計の動向を収入,消費,雇用,住宅投資等の観点から分析する。また,第2章で,90年代前半の「バブル」崩壊後の家計の消費行動,資産保有行動について,80年代末の「バブル」時代との比較をも踏まえて分析する。そこでは特に,第I部で取り上げた社会で働く女性の動向に重点を置いた。